数学

発散(div)のイメージを具体例で理解する

ベクトル解析・発散・マクスウェル方程式の準備

発散のイメージを具体例で理解する

発散 \(\nabla\cdot\mathbf{F}\) は、ベクトル場がその場所からどれくらい外へ出ているか、 または内へ吸い込まれているかを表す量です。 マクスウェル方程式では \(\nabla\cdot\mathbf{E}=\rho/\varepsilon_0\) の形で出てきます。 この記事では、矢印の図と簡単な計算を使って、発散の直感をつかみます。

BASIC

発散とは何を測っているのか

ベクトル場 \(\mathbf{F}\) とは、空間の各点に矢印が置かれているものです。 たとえば電場 \(\mathbf{E}\)、流体の速度場、風の流れなどがベクトル場です。

発散は、その点の近くに小さな箱を置いたとき、 箱の外へ出ていく矢印の量が、箱の中へ入ってくる矢印の量より多いか を見る量です。

発散が正:その場所から湧き出している。

発散が負:その場所へ吸い込まれている。

発散が0:入る量と出る量がつり合っている。

小さな箱 入る 出る 出る量が多いなら発散は正
図1:小さな箱から出る量と入る量の差を見る
FORMULA

計算式としての発散

3次元のベクトル場を \[ \mathbf{F}=(F_x,F_y,F_z) \] と書くと、発散は次のように定義されます。

\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial F_x}{\partial x} + \frac{\partial F_y}{\partial y} + \frac{\partial F_z}{\partial z} \]

2次元の図で考えるときは、 \[ \mathbf{F}=(F_x,F_y) \] として、

\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial F_x}{\partial x} + \frac{\partial F_y}{\partial y} \]

と見れば十分です。 ここからは、いくつかの具体例で「発散が正・負・0になる理由」を見ていきます。

EXAMPLES

具体例で発散のイメージをつかむ

矢印の向きだけでなく、場所によって矢印の大きさがどう変わるかに注目します。

例1 発散 0

一様な場:ただ同じ向きに流れているだけ

どこでも同じ向き・同じ強さ
図2:一様なベクトル場

右向きに一定の場を考えます。

\[ \mathbf{F}=(a,0) \]

\(a\) は定数なので、

\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial a}{\partial x} + \frac{\partial 0}{\partial y} = 0 \]

矢印は存在していますが、どこかから湧き出しているわけではありません。 小さな箱を置くと、左から入った分が右からそのまま出ていきます。

例2 発散 正

外向きに広がる場:その場所から湧き出している

中心から外へ広がる
図3:外向きに広がる場

原点から外へ広がる場を考えます。

\[ \mathbf{F}=(ax,ay) \]

このとき、

\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial (ax)}{\partial x} + \frac{\partial (ay)}{\partial y} = a+a = 2a \]

\(a>0\) なら発散は正です。 これは、その点の周辺から矢印が外へ出ていく量が多いことを意味します。

例3 発散 負

内向きに集まる場:その場所へ吸い込まれている

外から中心へ集まる
図4:内向きに集まる場

原点へ向かって吸い込まれる場を考えます。

\[ \mathbf{F}=(-ax,-ay) \]
\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial (-ax)}{\partial x} + \frac{\partial (-ay)}{\partial y} = -a-a = -2a \]

\(a>0\) なら発散は負です。 これは、その点へ吸い込まれる量が多いことを意味します。

例4 発散 0

渦状の場:回っていても湧き出しではない

ぐるぐる回るが、外へ増えていない
図5:渦状の場

原点の周りを回る場を考えます。

\[ \mathbf{F}=(-y,x) \]
\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial (-y)}{\partial x} + \frac{\partial x}{\partial y} = 0+0 = 0 \]

矢印は強く回っているように見えます。 しかし、外へ湧き出しているわけでも、中心へ吸い込まれているわけでもありません。

回っているかどうかを見る量は発散ではなく、回転・カール \(\nabla\times\mathbf{F}\) です。
例5 発散 0

サドル型の場:一方向では出るが、別方向では入る

横には出るが、縦には入る
図6:サドル型の場

次のような場を考えます。

\[ \mathbf{F}=(ax,-ay) \]
\[ \nabla\cdot\mathbf{F} = \frac{\partial (ax)}{\partial x} + \frac{\partial (-ay)}{\partial y} = a-a = 0 \]

横方向には外へ出ていますが、縦方向には中へ入っています。 その2つがちょうど打ち消し合うので、発散は0になります。

例6 原点にだけ源がある

点電荷の電場:原点以外では発散0、原点に電荷が集中

+ 源は中心の一点に集中している
図7:点電荷から放射状に広がる電場

点電荷 \(q\) が原点にあるとき、電場は放射状に広がります。

\[ \mathbf{E}(\mathbf{r}) = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \frac{q\mathbf{r}}{|\mathbf{r}|^3} \]

見た目にはどこでも湧き出しているように見えます。 しかし、原点以外には電荷がありません。

\[ \nabla\cdot\mathbf{E}=0 \quad (\mathbf{r}\ne0) \]

電荷は原点一点に集中しているため、厳密にはデルタ関数を使って、

\[ \rho(\mathbf{r})=q\delta(\mathbf{r}) \]

と表します。 つまり、点電荷の発散は「原点にだけ集中している」と考えます。

MAXWELL

マクスウェル方程式では発散はどう出てくるか

電磁気で重要なのは、電場の発散です。

\[ \nabla\cdot\mathbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon_0} \]

この式は、次の意味です。

電場の発散は、そこにある電荷密度で決まる。 正電荷があれば電場は湧き出し、負電荷があれば電場は吸い込まれる。

反対に、磁場については、

\[ \nabla\cdot\mathbf{B}=0 \]

です。 これは、磁場には電荷のような「単独の湧き出し口」や「単独の吸い込み口」がないことを表します。 磁石にはN極とS極がありますが、N極だけ、S極だけを単独で取り出す磁荷は通常の電磁気学では出てきません。

SUMMARY TABLE

発散のパターン別まとめ

場の形 発散 直感
一様な場 \(\mathbf{F}=(a,0)\) \(0\) 入った分がそのまま出る。湧き出しではない。
外向きに広がる場 \(\mathbf{F}=(ax,ay)\) \(2a\) 周囲へ出ていく量が多い。源がある。
内向きに集まる場 \(\mathbf{F}=(-ax,-ay)\) \(-2a\) 周囲から入ってくる量が多い。吸い込みがある。
渦状の場 \(\mathbf{F}=(-y,x)\) \(0\) 回っているだけで、湧き出しでも吸い込みでもない。
サドル型の場 \(\mathbf{F}=(ax,-ay)\) \(0\) 出る方向と入る方向が打ち消し合う。
点電荷の電場 \(\mathbf{E}\propto \mathbf{r}/|\mathbf{r}|^3\) 原点以外で \(0\) 電荷は原点一点に集中している。

まとめ:発散は「矢印の有無」ではなく「湧き出し量」を見る

  • 発散 \(\nabla\cdot\mathbf{F}\) は、その場所からベクトル場がどれくらい湧き出すかを表す。
  • 一様な場は、矢印があっても発散は0。
  • 外向きに広がる場は発散が正。
  • 内向きに集まる場は発散が負。
  • 渦状の場は、回っていても発散は0。
  • サドル型の場は、出る方向と入る方向が打ち消し合うと発散0になる。
  • マクスウェル方程式では、\(\nabla\cdot\mathbf{E}=\rho/\varepsilon_0\) が「電荷が電場の源になる」ことを表す。

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