マクスウェル方程式

マクスウェル方程式を数学的に解く(初期条件あり)

マクスウェル方程式・電磁波・数学的導出

マクスウェル方程式を数学的に解く|電磁波の波動方程式をわかりやすく導出

マクスウェル方程式は、電場と磁場の関係を表す電磁気学の基本方程式です。この記事では、真空中のマクスウェル方程式から波動方程式を導き、電磁波の解、光速、平面波、複素数表示までを数学的に整理します。

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電波、光、Wi-Fi、ラジオ、スマートフォンの通信などは、すべて電磁波と関係しています。

そして、電磁波の性質を数学的に説明する基本方程式が、マクスウェル方程式です。

マクスウェル方程式は、電場と磁場がどのように発生し、どのように変化し、どのように空間を伝わるのかを表しています。

この記事では、マクスウェル方程式を単に紹介するだけではなく、そこから電磁波の波動方程式を導く流れを解説します。

この記事の核心

マクスウェル方程式を解くと、電磁波が自然に出てくる
変化する電場が磁場を作り、変化する磁場が電場を作ることで、電場と磁場は波として空間を進みます。
マクスウェル方程式とは

マクスウェル方程式は、電磁気学の基本となる4つの方程式です。

真空中では、電束密度 D と磁場 H は次のように表せます。

\[ \mathbf{D}=\varepsilon_0\mathbf{E} \]
\[ \mathbf{B}=\mu_0\mathbf{H} \]

ここで、ε0 は真空の誘電率、μ0 は真空の透磁率です。

この関係を使うと、真空中のマクスウェル方程式は次の4つで表されます。

第1式

電場のガウスの法則

\[ \nabla\cdot\mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0} \]

電荷が電場の源になることを表します。

第2式

磁場のガウスの法則

\[ \nabla\cdot\mathbf{B}=0 \]

磁場には始まりも終わりもないことを表します。

第3式

ファラデーの電磁誘導の法則

\[ \nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t} \]

変化する磁場が電場を作ることを表します。

第4式

アンペール・マクスウェルの法則

\[ \nabla\times\mathbf{B}=\mu_0\mathbf{j}+\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t} \]

電流と変化する電場が磁場を作ることを表します。

電磁波を考えるために真空中を考える

電磁波を最もシンプルに導くために、電荷も電流もない真空中を考えます。

つまり、次の条件を置きます。

\[ \rho=0,\quad \mathbf{j}=0 \]

このとき、マクスウェル方程式は次のように簡単になります。

電荷・電流がない真空中のマクスウェル方程式

\[ \nabla\cdot\mathbf{E}=0 \]
\[ \nabla\cdot\mathbf{B}=0 \]
\[ \nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t} \]
\[ \nabla\times\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t} \]

この4つの式から、電場 \(\mathbf{E}\) と磁場 \(\mathbf{B}\) が波として伝わることを導きます。

電場の波動方程式を導く

まず、ファラデーの電磁誘導の式を使います。

\[ \nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t} \]

この式の両辺に、さらに回転 ∇× を作用させます。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=\nabla\times\left(-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}\right) \]

右辺では、時間微分と空間微分の順番を入れ替えることができます。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=-\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\mathbf{B}) \]

ここで、マクスウェル方程式の次の式を代入します。

\[ \nabla\times\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t} \]

すると、次の式が得られます。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=-\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2} \]
ベクトル解析の公式を使う

ここで、ベクトル解析の重要な公式を使います。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=\nabla(\nabla\cdot\mathbf{E})-\nabla^2\mathbf{E} \]

真空中では、\(\nabla\cdot\mathbf{E}=0\) なので、∇(\(\nabla\cdot\mathbf{E}\)) = 0 です。

したがって、次のように整理できます。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=-\nabla^2\mathbf{E} \]

これを先ほどの式に代入すると、

\[ -\nabla^2\mathbf{E}=-\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2} \]

両辺に -1 をかけて、次の式を得ます。

\[ \nabla^2\mathbf{E}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2} \]

導出結果

電場 \(\mathbf{E}\) は波動方程式を満たす
マクスウェル方程式から、電場が波として空間を伝わることが数学的に分かります。
波の速さを求める

一般的な波動方程式は、次の形で表されます。

\[ \nabla^2 u=\frac{1}{v^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} \]

ここで、v は波の速さです。

電場の波動方程式は、次の形でした。

\[ \nabla^2\mathbf{E}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2} \]

この2つを比較すると、次の関係が分かります。

\[ \frac{1}{v^2}=\mu_0\varepsilon_0 \]

したがって、波の速さ v は次のようになります。

\[ v=\frac{1}{\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}} \]

この値は、真空中の光速 c と一致します。

\[ c=\frac{1}{\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}} \]

ここが重要

マクスウェル方程式から導かれる電磁波の速さが、光速と一致します。つまり、光は電磁波の一種であることが数学的に示されます。

磁場の波動方程式も導く

磁場 \(\mathbf{B}\) についても同じように波動方程式を導くことができます。

まず、次の式を使います。

\[ \nabla\times\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t} \]

この両辺に回転 ∇× を作用させます。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{B})=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\mathbf{E}) \]

ここで、ファラデーの法則を代入します。

\[ \nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t} \]

すると、次のようになります。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{B})=-\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{B}}{\partial t^2} \]

さらに、ベクトル解析の公式を使います。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{B})=\nabla(\nabla\cdot\mathbf{B})-\nabla^2\mathbf{B} \]

真空中では、\(\nabla\cdot\mathbf{B}=0\) なので、次のようになります。

\[ \nabla\times(\nabla\times\mathbf{B})=-\nabla^2\mathbf{B} \]

したがって、

\[ -\nabla^2\mathbf{B}=-\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{B}}{\partial t^2} \]

両辺に -1 をかけると、磁場の波動方程式が得られます。

\[ \nabla^2\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{B}}{\partial t^2} \]

電場と磁場の波動方程式

\[ \nabla^2\mathbf{E}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2} \]
\[ \nabla^2\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{B}}{\partial t^2} \]

電場も磁場も同じ形の波動方程式を満たします。つまり、電場と磁場は一体となって波として伝わります。

導出の流れを整理する

ここまでの導出を、ステップごとに整理します。

電荷と電流がない真空中を考える

\(\rho=0\)、\(\mathbf{j}=0\) として、マクスウェル方程式を簡単にします。

回転をもう一度取る

\(\nabla\times\mathbf{E}\) や \(\nabla\times\mathbf{B}\) の式に、さらに ∇× を作用させます。

ベクトル解析の公式を使う

\(\nabla\times(\nabla\times\mathbf{E})=\nabla(\nabla\cdot\mathbf{E})-\nabla^2\mathbf{E}\) を使ってラプラシアンを出します。

波動方程式が現れる

電場と磁場の両方が、波動方程式を満たすことが分かります。

波の速さが光速になる

波の速さは \(c=1/\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}\) となり、真空中の光速と一致します。

1次元の平面波として解く

より具体的に、x方向に進む電磁波を考えます。

電場が y方向、磁場が z方向を向いているとします。

\[ \mathbf{E}=(0,E_y,0) \]
\[ \mathbf{B}=(0,0,B_z) \]

さらに、場は x と t のみに依存するとします。

この場合、電場の波動方程式は、次の1次元波動方程式になります。

\[ \frac{\partial^2 E_y}{\partial x^2}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2 E_y}{\partial t^2} \]

この方程式の解の一例は、次のような正弦波です。

\[ E_y(x,t)=E_0\cos(kx-\omega t) \]

これは、x方向に進む波を表します。

この波が波動方程式を満たすためには、次の関係が必要です。

\[ \omega=ck \]

つまり、波の速さは次のように表されます。

\[ c=\frac{\omega}{k} \]
磁場の解

電場が次のように表されるとします。

\[ E_y(x,t)=E_0\cos(kx-\omega t) \]

このとき、磁場も同じ位相で振動します。

\[ B_z(x,t)=B_0\cos(kx-\omega t) \]

電場と磁場の振幅には、次の関係があります。

\[ E_0=cB_0 \]

つまり、

\[ B_0=\frac{E_0}{c} \]

です。

電磁波の向きの関係

  • 電場 \(\mathbf{E}\) は y方向
  • 磁場 \(\mathbf{B}\) は z方向
  • 波の進行方向は x方向
  • 電場、磁場、進行方向は互いに直交する
複素数を使った電磁波の表示

電磁波を数学的に扱うときは、複素数を使うと便利です。

正弦波は、複素指数関数を使って次のように表せます。

\[ E(x,t)=\operatorname{Re}\left\{E_0 e^{j(kx-\omega t)}\right\} \]

ここで、Re は実部を取ることを意味します。

実際の物理的な電場は実数ですが、計算の途中では複素数を使います。

複素指数関数を使うと、微分が非常に簡単になります。

\[ \frac{\partial}{\partial x}e^{j(kx-\omega t)}=jk e^{j(kx-\omega t)} \]
\[ \frac{\partial}{\partial t}e^{j(kx-\omega t)}=-j\omega e^{j(kx-\omega t)} \]

複素表示のメリット

微分が掛け算に変わる
空間微分は jk、時間微分は -jω を掛ける操作として扱えるため、波の解析がかなり簡単になります。
平面波をベクトルで見る

平面波の電場を、ベクトルを使って次のように表します。

\[ \mathbf{E}=\mathbf{E}_0 e^{j(\mathbf{k}\cdot\mathbf{r}-\omega t)} \]

ここで、k は波数ベクトル、r は位置ベクトルです。

このとき、微分演算子は次のように対応します。

\[ \nabla \rightarrow j\mathbf{k} \]
\[ \frac{\partial}{\partial t}\rightarrow -j\omega \]

したがって、マクスウェル方程式は複素ベクトルの関係式として整理できます。

たとえば、\(\nabla\cdot\mathbf{E}=0\) は次のようになります。

\[ \mathbf{k}\cdot\mathbf{E}_0=0 \]

これは、電場が進行方向 \(\mathbf{k}\) に垂直であることを表しています。

同様に、\(\nabla\cdot\mathbf{B}=0\) から次の式が得られます。

\[ \mathbf{k}\cdot\mathbf{B}_0=0 \]

これは、磁場も進行方向に垂直であることを表しています。

さらに、\(\nabla\times\mathbf{E}\) = -∂B/∂t から、次の関係が得られます。

\[ \mathbf{k}\times\mathbf{E}_0=\omega\mathbf{B}_0 \]

平面波の結論

  • 電場 \(\mathbf{E}\) は進行方向 \(\mathbf{k}\) に垂直
  • 磁場 \(\mathbf{B}\) も進行方向 \(\mathbf{k}\) に垂直
  • 電場 \(\mathbf{E}\) と磁場 \(\mathbf{B}\) は互いに垂直
  • \(\mathbf{E}\)、\(\mathbf{B}\)、\(\mathbf{k}\) は右手系を作る
マクスウェル方程式の「解」とは何か

マクスウェル方程式を解くとは、与えられた条件のもとで、電場 \(\mathbf{E}\) と磁場 \(\mathbf{B}\) を求めることです。

真空中で電荷も電流もない場合には、波動方程式を導き、その解として電磁波を求めることができます。

一方で、電荷や電流がある場合には、状況はより複雑になります。

たとえば、次のような問題では、境界条件や媒質の性質も考える必要があります。

マクスウェル方程式を解く具体的な問題

  • アンテナから電波が放射される問題
  • 導体表面で電磁波が反射する問題
  • 空気からガラスへ電磁波が進む問題
  • 導波管の中を電磁波が伝わる問題
  • 同軸ケーブルの中の電磁場を求める問題

つまり、マクスウェル方程式の解は、方程式だけで一意に決まるわけではありません。

次のような条件によって、求めるべき電場と磁場が変わります。

  • 電荷分布
  • 電流分布
  • 媒質の性質
  • 境界条件
  • 初期条件

注意点

「マクスウェル方程式を解く」といっても、常に同じ形の答えが出るわけではありません。真空中の平面波は最も基本的な解の一つです。実際の回路、アンテナ、導体、誘電体、導波管などでは、境界条件や媒質の性質を含めて解く必要があります。

まとめ

マクスウェル方程式を数学的に解くポイント

  • マクスウェル方程式は、電場と磁場の関係を表す4つの基本方程式です。
  • 電荷も電流もない真空中では、方程式がシンプルになります。
  • ファラデーの法則とアンペール・マクスウェルの法則から、電場と磁場の波動方程式を導けます。
  • 電場の波動方程式は、\(\nabla^2\mathbf{E}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{E}}{\partial t^2}\) です。
  • 磁場の波動方程式は、\(\nabla^2\mathbf{B}=\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial^2\mathbf{B}}{\partial t^2}\) です。
  • 波の速さは、\(c=1/\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}\) となり、真空中の光速と一致します。
  • 平面波では、電場、磁場、進行方向が互いに直交します。
  • 複素数表示を使うと、微分方程式を代数的に扱いやすくなります。
  • 実際の問題では、電荷、電流、媒質、境界条件、初期条件が重要になります。

マクスウェル方程式を数学的に解くことで、電磁波、光、電波、通信、アンテナ、導波管、光学などの基礎が見えてきます。

特に、真空中で電荷も電流もない場合には、マクスウェル方程式から波動方程式が自然に現れます。

その解として、電場と磁場が互いに直交しながら進む電磁波が得られます。

つまり、マクスウェル方程式は、光や電波がどのように空間を伝わるのかを説明する、非常に強力な数学的枠組みだといえます。

次に学ぶと理解が深まるテーマ

複素電場・ポインティングベクトル・導波管・アンテナ放射・電磁波の反射と屈折を学ぶと、マクスウェル方程式の応用がさらに見えてきます。

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