USB Type-Cの仕組みをわかりやすく解説
各ピン・役割・周辺回路まで詳しく見る
USB Type-Cは、単に「裏表どちらでも挿せるUSB端子」ではありません。 24本のピンを使って、電源、USB 2.0通信、高速通信、向き検出、電流通知、USB Power Delivery、映像出力の切り替えまで行う、かなり高機能なコネクタです。 この記事では、Type-C端子の中で何が起きているのかを、ピン配置と回路の視点から順番に解説します。
1. USB Type-Cとは何か
USB Type-Cは、USBの新しいコネクタ形状です。 従来のUSB Type-AやMicro-Bと違い、上下どちら向きでも挿せるリバーシブル構造になっています。
ただし、ここで重要なのは、Type-Cは単なる形状の話だけではないということです。 Type-Cコネクタには、次のような機能を実現するための専用ピンが用意されています。
電源供給
VBUSとGNDで電力を送ります。
通常は5Vですが、USB PDでは機器同士が交渉して、より高い電圧・電力を扱える場合があります。
USB通信
USB 2.0用のD+/D−に加えて、
高速通信用のTX/RX差動ペアがあります。
挿入方向の判定
CC1/CC2ピンにより、
コネクタがどちら向きに挿されたかを判断できます。
役割の判定
どちらが電源を供給する側か、どちらが受ける側かを
CCピンの抵抗や電圧で判定します。
2. USB Type-Cの24ピン構造
USB Type-Cレセプタクル、つまり機器側の受け口には、A面とB面にそれぞれ12ピン、合計24ピンがあります。 見た目は小さいですが、中にはかなり多くの信号線が詰め込まれています。
図1:USB Type-Cレセプタクルのピン配置イメージ
ピンの大まかな分類
| 分類 | ピン名 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 電源 | VBUS |
5VまたはUSB PDで交渉された電圧を供給する電源ライン。 |
| グランド | GND |
電源の戻り道。信号の基準電位にもなる。 |
| USB 2.0 | D+, D− |
USB 2.0通信用の差動信号線。マイコンとの接続ではここだけ使うことも多い。 |
| 高速通信 | TX1/RX1/TX2/RX2 |
USB 3.x、USB4などの高速データ通信に使う差動ペア。 |
| 設定チャネル | CC1, CC2 |
接続検出、向き検出、電流通知、USB PD通信などに使う。 |
| サイドバンド | SBU1, SBU2 |
DisplayPort Alt Modeなど、USB以外の補助信号に使われる。 |
VBUS、GND、D+、D−、CC1、CC2だけで成立することもあります。
3. VBUSとGND:電源ピンの仕組み
VBUSはUSBの電源ラインです。
通常のUSB接続では5Vが供給されます。
USB Type-Cでは、レセプタクル内に複数のVBUSピンがあります。
これは電流を分散して流し、接触抵抗や発熱を抑えるためです。
同様にGNDピンも複数あります。
電源の戻り道としてだけでなく、高速信号の基準としても重要です。
高速通信では、GNDの取り方が悪いと信号品質が大きく悪化します。
図2:USB Type-Cの電源経路
VBUSに直結してよいのか
小さなUSB 2.0機器では、VBUSをレギュレータに入れて3.3Vを作るような回路がよくあります。
ただし、実際の製品では次のような保護部品を入れることが多いです。
- ヒューズ、ポリヒューズ、ロードスイッチ
- 過電圧保護IC、サージ保護素子
- TVSダイオードによるESD保護
- 入力コンデンサ
- 3.3Vや1.8Vを作るレギュレータ
4. D+ / D−:USB 2.0通信
D+とD−は、USB 2.0通信用の差動信号線です。
USBキーボード、USBマウス、USBシリアル変換、マイコン基板などでは、この2本で通信していることが多いです。
Type-Cコネクタには、A面側にもB面側にもD+とD−があります。
これは、どちら向きに挿してもUSB 2.0通信ができるようにするためです。
多くのUSB 2.0機器では、基板上でA面側とB面側のD+同士、D−同士を接続します。
図3:USB 2.0だけを使う場合のD+/D−接続イメージ
差動信号とは何か
USB 2.0のD+とD−は、2本の線の電圧差で情報を表します。
片方の電圧だけを見るのではなく、D+とD−の差を見ることで、ノイズに強くなります。
USB 2.0だけのType-C機器でよくある接続
USB Type-C receptacle
A6 D+ ─┐
├── USB_D+ ── ESD保護 ── マイコンのD+
B6 D+ ─┘
A7 D- ─┐
├── USB_D- ── ESD保護 ── マイコンのD-
B7 D- ─┘
VBUS ── 保護 ── 5V入力 ── レギュレータ ── 3.3V
GND ─────────────────────────────── GND
CC1 ── 5.1kΩ ── GND
CC2 ── 5.1kΩ ── GND
このように、USB 2.0だけなら高速差動ペアを使わずに済みます。 マイコン基板でType-Cを採用する場合は、このような構成が非常によく見られます。
5. TX/RX差動ペア:高速通信
USB 3.xやUSB4のような高速通信では、
D+/D−だけではなく、
TXとRXの差動ペアを使います。
Type-Cには向きの反転に対応するため、複数の高速差動ペアが用意されています。 機器側では、どちら向きに挿されたかに応じて、 使用する高速信号ペアを切り替える必要があります。
図4:高速通信ではMUXで信号経路を切り替える
なぜMUXが必要なのか
Type-Cは上下逆に挿せるため、端子側で見える高速信号の位置が変わります。
USB 2.0のD+/D−は比較的単純にまとめられますが、
USB 3.x以上の高速差動ペアは単純に全部つなげばよいわけではありません。
高速信号は、配線長、インピーダンス、分岐、寄生容量に非常に敏感です。 そのため、高速通信用のType-C機器では、 CCピンで向きを判定し、その結果を使って高速信号MUXを切り替える という構成がよく使われます。
6. CC1 / CC2:Type-Cの心臓部
USB Type-Cで最も重要なのがCC1とCC2です。
CCはConfiguration Channelの略で、設定チャネルという意味です。
CCピンは、主に次のような役割を持ちます。
- ケーブルや相手機器が接続されたことを検出する
- プラグがどちら向きに挿されたかを判定する
- どちらが電源供給側、どちらが受電側かを判定する
- 供給可能な電流の目安を通知する
- USB Power Deliveryの通信に使う
- VCONNを供給する対象を判断する
Rp、Rd、Raとは何か
CCピンの説明で必ず出てくるのが、Rp、Rd、Raという抵抗です。
| 名前 | 接続先 | 主な意味 |
|---|---|---|
Rp |
電源供給側がCCをプルアップ | 「自分は電源を出す側です」と示す。供給可能電流の通知にも使われる。 |
Rd |
電源を受ける側がCCをGNDへプルダウン | 「自分は電源を受ける側です」と示す。 |
Ra |
ケーブル内の電子回路などが使う補助的な終端 | VCONNを必要とする電子マーカー入りケーブルなどの検出に関係する。 |
図5:CCピンのRp/Rdによる接続検出
USB 2.0機器ならCCに5.1kΩを入れることが多い
USB Type-Cで電源を受けるだけの機器、つまりSink側の機器では、
CC1とCC2にそれぞれRdを接続します。
よく見かけるのが、各CCピンを約5.1kΩでGNDへ落とす構成です。
USB Type-C receptacle as Sink device
CC1 ── 5.1kΩ ── GND
CC2 ── 5.1kΩ ── GND
VBUS ── 保護回路 ── 5V入力
GND ─────────── GND
7. 裏表を判定できる理由
USB Type-Cが上下どちら向きでも挿せる理由は、単にピンを左右対称に並べたからだけではありません。
特に重要なのは、CC1とCC2のどちらが相手とつながったかを見ることで、
プラグの向きを判定できることです。
図6:CC1/CC2による向き検出
例えば、機器側から見てCC1に相手の抵抗が見えた場合と、
CC2に相手の抵抗が見えた場合では、
プラグの向きが違うと判断できます。
USB 2.0だけの機器では、向きが分かってもD+/D−を両側でまとめているため、 それほど複雑な切り替えは必要ありません。 しかし、USB 3.x以上の高速通信では、向きに応じて高速差動ペアの接続を切り替える必要があります。
8. USB Power Deliveryの仕組み
USB Power Delivery、略してUSB PDは、Type-CのCC線を使って電源条件を交渉する仕組みです。 例えば、スマホやノートPCが充電器に対して、 「5Vだけでなく9Vや15Vを出せますか」 「この機器は何Wまで受け取れます」 というようなやり取りを行います。
重要なのは、USB PDではいきなり高電圧が出るわけではないということです。 最初は基本的に5Vから始まり、CC線上の通信で条件が合意されてから、 VBUSの電圧が切り替わります。
図7:USB PDの交渉イメージ
PD対応回路で必要になる部品
USB PDに対応する場合、単純な抵抗だけでは不十分です。 一般的には次のような部品が必要になります。
- USB PDコントローラIC
- VBUSのロードスイッチ、またはパワーパス制御IC
- 過電圧・過電流保護
- DC-DCコンバータ
- 電流検出抵抗
- ESD保護素子
- 必要に応じてMCUやSoCとのI2C/SPI接続
9. SBU1 / SBU2とAlt Mode
SBU1とSBU2は、Sideband Useの略です。
通常のUSB 2.0通信やVBUS電源供給だけでは使わないことも多いですが、
DisplayPort Alt Modeなどで重要になります。
Alt Modeとは、USB Type-Cの端子を使って、USB以外の信号を流すモードです。 代表例がDisplayPort Alt Modeです。 ノートPCのType-C端子からモニターへ映像出力できるのは、このような仕組みによるものです。
図8:SBUとAlt Modeのイメージ
10. よくある周辺回路例
ここからは、USB Type-C端子の周辺にどのような回路が置かれることが多いかを見ていきます。 実際の製品やモジュールでは、用途によって構成が変わります。
例1:USB 2.0デバイスとして使うマイコン基板
最もシンプルな例です。 PCや充電器から5Vを受け取り、USB 2.0で通信する小型基板を想定します。
図9:USB 2.0マイコン基板のType-C周辺回路イメージ
この回路のポイント
CC1とCC2にそれぞれ5.1kΩ程度のプルダウン抵抗を入れる。D+/D−には低容量のESD保護素子を入れる。VBUSには保護回路やレギュレータを入れる。- USB 2.0だけなら高速差動ペアは未使用でもよい。
- シールドの接続方法は製品方針によって変わる。GNDへ直接、またはRC/ESD経由などがある。
例2:充電専用のType-C入力
USB通信を使わず、Type-C端子を電源入力として使うだけの機器もあります。 この場合でも、CCピンは重要です。 CCピンを正しく処理しないと、相手の充電器がVBUSを出してくれない場合があります。
Type-C充電入力の簡易構成
VBUS ── TVS ── ヒューズ/ロードスイッチ ── 充電IC ── バッテリー
GND ─────────────────────────────── GND
CC1 ── 5.1kΩ ── GND
CC2 ── 5.1kΩ ── GND
D+ / D− は未使用、または充電ICの検出端子へ接続する場合あり
例3:USB PD対応の受電回路
USB PDで9Vや15Vを受けたい場合は、PDコントローラが必要になります。 PDコントローラがCC線で充電器と会話し、合意した電圧がVBUSに出てきます。
図10:USB PD対応Sink回路のイメージ
例4:Source側、つまり電源を出す側
PCや充電器のように電源を供給する側では、CCピンにRpを持ちます。
Sinkが接続されるとCC電圧が変わり、接続を検出します。
Type-C Source側の概念
5V電源 ── 電源スイッチ ── VBUS
GND ─────────────── GND
CC1 ── Rp ── 内部電源
CC2 ── Rp ── 内部電源
CC電圧を監視して、
相手機器の接続・向き・電流能力・PD通信を処理する
11. 基板設計で注意すること
USB 2.0だけの場合
USB 2.0だけなら、Type-C設計の難易度は比較的低めです。 それでも、以下の点には注意が必要です。
CC1とCC2に正しいRdを入れる。D+とD−はなるべく短く、並走させる。- D+/D−の途中に不要な分岐を作らない。
- ESD保護素子は端子の近くに置く。
- VBUSには保護と十分なコンデンサを入れる。
- GNDをしっかり取る。
USB 3.x以上の場合
USB 3.x以上では、配線設計の難易度が一気に上がります。 数Gbps以上の信号では、配線はただの導線ではなく、伝送線路として考える必要があります。
- 差動インピーダンスを合わせる。
- 差動ペア内の長さを揃える。
- 差動ペア同士の間隔を適切に取る。
- ビアを減らす。
- コネクタ付近で配線を不自然に曲げない。
- 高速信号用の低容量ESD保護素子を使う。
- リファレンスGNDプレーンを途切れさせない。
- 必要に応じてリドライバ、リタイマ、MUXを使う。
ESD保護の考え方
USB端子は人が直接触れる外部端子なので、静電気が入りやすい場所です。 そのため、端子の近くにTVSダイオードなどのESD保護素子を置くことが多いです。
ただし、高速信号線に容量の大きい保護素子を入れると、 信号波形がなまって通信品質が悪化します。 USB 2.0用、USB 3.x用、CC/SBU用、VBUS用では適した保護素子が異なります。
シールドの接続
USB Type-Cコネクタには、信号ピンとは別に金属シェルがあります。 シールドを基板GNDへどう接続するかは、製品のEMI対策や安全設計によって変わります。
- GNDへ直接接続する
- コンデンサ経由で高周波的に接続する
- 抵抗とコンデンサを並列にして接続する
- シャーシGNDとデジタルGNDを分ける
- ESD保護部品を経由する
12. 各ピンの役割まとめ
| ピン系統 | 代表ピン | 役割 | 自作時の扱い |
|---|---|---|---|
| 電源 | VBUS |
5VまたはPDで交渉された電圧を供給。 | 保護回路、レギュレータ、コンデンサを入れる。 |
| グランド | GND |
電源の戻り道、信号の基準。 | 低インピーダンスでしっかり接続。 |
| USB 2.0 | D+, D− |
USB 2.0通信。 | A側/B側をまとめ、ESD保護を通してUSB PHYへ。 |
| 高速通信 | TX/RX |
USB 3.x、USB4などの高速通信。 | 差動インピーダンス管理、MUX、低容量ESDが必要。 |
| 設定チャネル | CC1, CC2 |
接続検出、向き判定、電流通知、PD通信。 | SinkならRd、SourceならRp。PDならコントローラICへ。 |
| サイドバンド | SBU1, SBU2 |
Alt Modeなどの補助信号。 | USB 2.0だけなら未使用も多い。必要に応じて保護。 |
| シールド | Shell | ノイズ・ESD対策。 | GNDやシャーシGNDへ設計方針に従って接続。 |
13. まとめ
USB Type-Cは、見た目は小さな端子ですが、中身はかなり複雑です。
特に、従来のUSB端子と大きく違うのは、CC1とCC2によって、
接続検出、向き判定、電源役割の判定、PD通信まで行う点です。
USB 2.0だけの自作機器なら、比較的シンプルです。
VBUS、GND、D+、D−、CC1、CC2を正しく処理すれば、
Type-C端子を使ったマイコン基板や小型USB機器を作ることができます。
一方で、USB 3.x、USB4、USB PD、DisplayPort Alt Modeまで扱う場合は、 高速信号設計、電源制御、PDプロトコル、保護回路、コネクタ周辺のレイアウトまで必要になります。 この段階になると、単にピンをつなぐだけではなく、 専用ICやリファレンス回路を使った設計が現実的になります。


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